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(後編)東大名誉教授 横山先生に疑問・質問を聞いてみた

中編では、バイオエタノール生産と食料との関係について、横山先生に解説していただきました。

最終回となる後編では、これからE10導入を予定している日本において、私たちが実際にバイオエタノール混合ガソリンを使うとき、気になることについて横山先生にお答えいただきます。

過去を振り返っても、石油価格の変動の方が大きく、エタノールの価格は相対的に安定しています。エタノール利用は、中東依存度を下げ、エネルギーの調達先を多様化することで、燃料価格の安定化に貢献できます。いずれにしても、E10やE20導入の段階でも、エタノールに免税措置がとられることを期待しています。

ちなみに、アメリカではエタノール価格が安いので、ガソリンに対するエタノールの混合割合が高いほど、安くなります。

エタノールを10%混合したガソリンであるE10を燃料とする車は、E10を使っても良いという認定を、国から受けなくてはいけません。現在でも新車の4割程度はE10認定車です。本格的導入に際しては、E10に対応できていない車は、国土交通省の認定を受ける必要があります。従って、安全性に問題はありません。
車の給油口キャップの裏にE10対応の場合、シールが貼られています。車をお持ちの方はぜひ見てください。日本の車両メーカーは、世界を相手にE10対応車を輸出し、現地生産を行っています。これまで安全性の問題は指摘されていません。

わが国では名古屋の中川物産という会社がエタノール直接混合の、E3やE7を販売し、実際にバイオエタノールを直接混合したガソリン車が走っています。

ガソリンの発熱量はリットル当たり約8,000kcalで、これに対してエタノールの発熱量はリットル当たり約5,600kcalでガソリンに比べて3割ほど低いのですが、E10は10%混合なので、ガソリンに比べて計算上は3%燃費が低くなります。さきほど申し上げたように、オクタン価が上がるのでエンジン性能が向上し、実際に走行しても問題ないと言われています。

電気自動車は寒冷地では、バッテリーの効率が3割ほど低下するといわれています。暖房のエアコンを使うと、バッテリーの消耗が激しいとも言われています。これに対して、E10は寒冷地でも問題はありません。事実、カナダや北欧でも問題なく使われています。ただし、エタノールの混合率が85%と高い場合は、エンジンの始動性が悪くなると指摘されています。E10やE20では、このような心配はいらないです。

さきほどお話しした通り、現在わが国ではガソリンに平均でエタノール換算で、1.9%のETBE(エチル・ターシャリー・ブチル・エーテル)が混合されています。しかし、このことを意識している方は少ないと思います。逆に言えば、それほど私たちの生活に、ETBE混合ガソリンが溶けこんでいるとも言えます。E10やE20が導入されても、ETBE同様に特に意識することなく使えると思います。ただし、本格的に導入された時点で、自分の車がE10対応でない場合は、ガソリンスタンド側も十分注意を払うとは思いますが、誤給油を避けるために注意が必要です。

脱炭素に向けて、ハイブリッド車、電気自動車、燃料電池車などの次世代車が普及してくる中で、バイオエタノールを混合した燃料を使うことのメリットがあります。従来車が使えること、車の値段が安いこと、従来のインフラであるガソリンスタンドが使えることなどです。当然ながら、エタノールを混合した分だけ、CO₂排出量が減らせるというメリットがあります。これらのことを十分意識して生活をすることが大事だと思います。

バイオエタノールが日常でどの程度使われているかを意識することはなかなかありませんが、実は私たちの生活を陰から支えていることがよく分かりました。そして、日本でも2030年に向けてE10の導入を目指す動きが始まっており、これからますますバイオエタノールが注目されることが予想されます。私たちも普段から、地球に優しい選択をしていけるよう、意識することが重要だと改めて思います。

横山先生、質問にお答えいただきありがとうございました。