デントコーンから作られるバイオエタノール
世界の再生可能エネルギー市場において、アメリカ産バイオエタノールは存在感を放っています。バイオエタノールの主原料であるデントコーンの生産量は、アメリカが世界一。広大な国土と世界最先端の農業技術を背景に、安定した大量生産を実現しています。そして、この豊富な原料を基に生産されるバイオエタノールの供給量もまた、世界一を誇ります。
以下は2024年の国別バイオエタノール生産量のシェアです。

アメリカのエタノール生産量は、2000年代に入ってから目覚ましい成長を遂げてきました。下のグラフが示すように、生産量は一貫して右肩上がりで推移。2020年には新型コロナウイルスの世界的な流行により一時的に生産が落ち込みましたが、経済活動の再開と共に力強く回復しました。

そして、2024年には年間生産量が161億ガロン(約6,100万キロリットル)に達し、過去最高を記録。このデータは、バイオエタノール市場の需要が堅調であること、そしてアメリカにその需要に応えるだけの供給能力が年々増強されていることを明確に示しています。
バイオエタノール生産と食料の関係
再生可能エネルギーとして注目されるバイオエタノール。環境に優しいというメリットがある一方で、「食料用の穀物がなくなってしまうのでは?」「穀物の値段が上がる原因になるのでは?」といった心配の声も聞かれます。それぞれ見ていきましょう。
疑問①:エタノール生産で、食料用のトウモロコシは不足する?
現在の生産状況においてその心配はほとんどありません。
「エタノールの生産が増えると、その分、食料や家畜の飼料に回るトウモロコシが減ってしまうのでは?」と考えるのは自然なことです。しかし、事実は異なります。
まず、世界のトウモロコシ生産量そのものが、技術革新などにより2000年代以降、順調に増え続けています。パイ全体が大きくなっているのです。

そして最も重要な点が、エタノール生産に利用されるトウモロコシの割合です。まずは世界全体でのトウモロコシの生産とエタノール原料利用について見てみましょう。実は、エタノール向けに使われる量は、世界全体のトウモロコシ生産量のうち、わずか10%程度に過ぎません。食料用や飼料用としての市場の需要に対して、供給量は充分に満たせている状態が続いています。

アメリカ産トウモロコシのエタノール原料利用について見てみると、アメリカでエタノール生産が始まった2000年代中頃から増えたトウモロコシ生産量の分がちょうどエタノール原料(赤い部分)として消費され、家畜飼料(緑色)や食品用(青色)としての利用量を圧迫していないことがわかります。

疑問②:バイオエタノールの増産が、穀物価格を高騰させる?
こちらも、バイオエタノールの生産増加と穀物価格の高騰との間に、直接的な因果関係は薄いことが分かっています。
穀物価格は、天候や国際情勢、そして原油価格をはじめとする様々な商品の価格(総商品価格)と連動する、非常に複雑なメカニズムで決定されます。バイオエタノールの需要は、その数ある要因の一つに過ぎません。
例えば、2008年のリーマンショック後では、バイオ燃料の生産量は増え続けていた一方、当時、世界的な不況で多くの商品価格が下落し、穀物価格も同様に下がりました。
もしバイオエタノールの生産量が価格を押し上げる主な要因であれば、このような逆の動きは起こりません。この事実からも、トウモロコシをはじめとする穀物価格の上昇を、エタノール生産の増加だけと結びつけるのは難しいことが分かります。
「食料との競合」や「価格高騰」といったバイオエタノールに関する懸念は、実際のデータに照らし合わせると、過度に心配する必要はないと言えます。もちろん、将来にわたって食料や環境とのバランスを注視し続けることは不可欠です。
しかし、イメージだけで判断するのではなく、事実やデータに基づいて正しく理解することが、持続可能な社会の実現に向けたエネルギー問題を考える上で非常に重要なのです。

技術革新が拓く、アメリカ産バイオエタノールの未来
これまで見てきたように、アメリカのトウモロコシ生産は作付面積を抑えながら、単位面積あたりの収穫量を増大させてきました。
これを可能にしたのが、絶え間ない技術革新です。
- 機械の大型化・自動化: より少ない労力で、より広大な面積を効率的に管理。
- 種子の改良: 交配育種、突然変異、F1技術や遺伝子組み換え技術を用いて病害虫や気候変動に強く、多くの実をつける優れた品種を開発。
- IT技術の利用: GPSやドローン、AIを活用した「スマート農業」で、水や肥料を最適なタイミングと量で供給。
これまで説明してきた通り、2000年代以降こうした技術革新によってアメリカのトウモロコシ生産量は大きく増加しました。
そして、アメリカのトウモロコシは、現在の技術をもってすればまだ生産量を伸ばせる余力があると言われています。そこで、農家がさらに生産を増やすためには、それに見合うだけの「需要」、つまりバイオエタノールの確かな使い道が必要です。
今後、世界中でガソリンへのバイオエタノール混合がさらに進んだり、次世代のエネルギーとして期待される「持続可能な航空燃料(SAF)」の原料としての利用が本格化したりと、バイオエタノールが社会でより一層使われるようになれば、デントコーンの活躍の場はさらに大きく広がっていくでしょう。
エネルギー問題の解決に貢献していくためにも、持続可能な未来のために、バイオエタノールのさらなる普及が期待されます。
