国をあげて取り組むバイオエタノール生産
アメリカは世界最大のバイオエタノール生産国であり、その生産量を年々拡大させています。
2011年には年間約136億ガロン(約5,150万kL)だった生産量が、2022年末には約177億ガロン(約6,700万kL)に増加しました。この成長の背景には、自動車燃料としての需要拡大と、政府の積極的なバイオ燃料政策があります。
政策支援では、例えばこれまで行われてきている施策には以下のようなものがあります。
- RFS(再生可能燃料標準)プログラム:一定割合のバイオ燃料使用を義務化
- 混合比率の規制緩和:季節限定としていたエタノール15%混合ガソリン、E15の通年販売による市場拡大の後押し
- バイオ燃料産業への投資支援:生産設備の拡充やインフラ整備への補助金

こうした措置の影響もあり、バイオエタノールの生産は増加。2020年にはパンデミックの影響で一時的に生産量が減少しましたが、経済の回復とともに燃料需要が戻り、エタノールの生産量も再び増加しています。
なお、アメリカ国内には21の州にわたって187のバイオエタノール工場が稼働しています。その生産能力の大部分は中西部に集中しており、特に以下の3州が生産の中心となっています(総生産量の比率は2023年)。
- アイオワ州:全体の生産量の27%
- ネブラスカ州:全体の生産量の13%
- イリノイ州:全体の生産量の10%
この3州だけで、アメリカのバイオエタノール総生産能力の約50%を占めています。

今後も、環境負荷の低減やエネルギー自給率の向上を目的として、バイオエタノールの生産と普及が進んでいくことが期待されています。
レギュラーガソリンよりも安いバイオエタノール
バイオエタノールは、ガソリンに混合して使用することで、自動車用燃料として広く活用されています。特にアメリカでは、その経済的メリットと環境への貢献が高く評価されており、近年ますます普及が進んでいます。
アメリカでは、2015年から2018年の間にガソリンにエタノールを混合することで、燃料価格が1ガロン(約3.785リットル)あたり約7%低下したという調査結果があります。これにより、消費者の年間燃料コストは合計で数百億ドル規模の節約につながったとされています。
出典:https://www.pkverlegerllc.com/assets/documents/VerlegerGasPricesStudy2019.pdf
さらにアメリカでは、2019年から2022年の間にガソリンを混合することで、燃料
価格が1ガロンあたり0.77ドル低下したという調査結果があります。これにより、
消費者の年間燃料コストは合計で951億ドル(約14.3兆円)規模の節約につながったとされています。
出典:“U.S. Ethanol Industry Briefing”Edward S. Hubbard氏(再生可能燃料協会(RFA))

この価格メリットは、バイオエタノール自体の価格とガソリン価格との価格差や連邦政府や州政府による推進策や補助金によるもので、エタノールの混合率が高いほど燃料価格も低くなる傾向があります。
たとえば、アメリカでは現在ほぼすべてのガソリンに使用されているE10(エタノール10%混合ガソリン)に比べて、E15(エタノール15%混合ガソリン)は1ガロン(約3.785リットル)あたり平均10セント(約15円)安くなっています。

このように、エタノール混合燃料は消費者にとって経済的にも魅力的な選択肢となっているのです。
バイオエタノールは、経済的な節約と環境保護の両面でメリットをもたらしています。特に、アメリカではバイオ燃料政策の支援により、エタノール混合燃料の利用拡大が進んでいます。
日本においても、近年進行するガソリン価格の高騰に対し、バイオ燃料の普及が進むことでガソリン価格の安定化に繋がる可能性があります。
世界で普及するバイオエタノール対応車
バイオエタノール混合ガソリンは、世界各国で導入が進んでいます。しかし、使用するためには一定の適合性基準を満たす必要があります。
国立再生可能エネルギー研究所(NREL)の調査によると、バイオエタノール混合燃料に適応するためには、以下の3つの条件をクリアする必要があります。
- 車両が正常に始動し、通常通り走行できること
- 燃料が燃料システムの漏れを引き起こさないこと
- 燃料がエンジンや燃料システム(排ガス制御装置を含む)を腐食・劣化させないこと

現在世界で販売されている車両は技術的にはE15迄の適応が可能とされていますが、アメリカで販売されているE85やブラジルで販売されているE100を利用するために、バイオエタノール高濃度混合燃料が使用可能なフレックスフューエル車(FFV)も販売されています。
アメリカ
アメリカでは、1970年代からE10が普及しており、現在使用されているガソリンの95%以上がE10となっています。E15については2001年以降に製造された車両であれば適合可能です。E85対応フレックスフューエル車(FFV)も普及しており、2024年までに2,200万台以上のFFVが登録されています。
ブラジル
ブラジルでは、1970年代からE10、1980年代にはE20以上が一般的となり、政府の政策によってE20以上の使用が義務化され、現在の標準燃料はE27となっています。さらに、2003年以降に販売された新車のほとんどがE100対応のFFVであり、ガソリンとエタノールを自由に選択できるシステムが確立されています。
中国
ほぼすべての車両がE10に適合しており、98%以上の車両がE15にも適合可能とされています。今後、政策次第ではE15の普及が進む可能性があります。
インド
2005年以降の車両はE15にも適合可能であり、2023年から一部の地域でE20の導入が開始されています。日系メーカーやインド国内メーカーの一部がE20対応車両を市場に投入しており、今後の普及が期待できます。
日本
2000年以降の車両はE10への適合が品質確保法上認められていますが、現在はエタノールは直接混合ではなくETBEとして混合され、その混合割合はわずかエタノール1.8%(E1.8)相当です。ただし、2025年3月現在、例外的に一部の地域ではE3(エタノール3%混合ガソリン)とE7(エタノール7%混合ガソリン)が使用されている事例もあります。政府は2025年11月、2030年度までに最大濃度10%の低炭素ガソリン(ほぼE10)の供給開始を目指し、2030年代のできるだけ早期に、乗用車の新車販売におけるE20対応車の比率を100%とすることを目指す、という目標を発表しました。

バイオエタノール混合ガソリンの普及状況は国によって異なります。今後、環境負荷の低減や燃料コスト削減といったメリットを享受するためには、通常車両でのE10の普及はもとより、E20対応車やFFVの普及がポイントとなってくるでしょう。