前編ではE10、E20ガソリンに関する基本的な内容と、なぜ日本で今、導入が必要とされているのかを近藤先生に解説いただきました。
中編では引き続き、E10、E20ガソリンの世界での利用状況や、脱炭素への効果を深堀りしていきます。
― 脱炭素になぜバイオエタノールが有効だと考えられるのでしょうか?
バイオエタノールは、既に製造技術が確立しています。合成燃料と比べて製造コストも安く、各国において化石燃料の代替として導入が進んでいます。
日本でも、2011年から法律に基づいて、石油精製会社に対して、 ガソリン代替としてバイオエタノールの利用を義務付けています。

皆さんが日ごろ使っているガソリンの中には、既にバイオエタノールが入っています。これは、バイオエタノールそのものではなく、ETBE(エチル・ターシャリー・ブチル・エーテル)と呼ばれる、変換されたものになっています。現在では、原油換算で50万KLが利用されています。しかしその量は1.85%程度と非常に低くなっています。
ETBEは、エタノールを更に加工する必要があるため、製造コストが高く、ETBEの原料となるイソブテンは、石油化学製品であり、またガソリン生成時に生産される副産物でもあります。そのため、簡単に増産することができません。
一方で、バイオエタノール直接混合ガソリンは製造工程がシンプルです。製造コストも安くなっています。

世界的にはバイオアルコール直接混合ガソリンが広く普及しています。日本でもこの規格にあったエタノールを今後10%まで増やしていきます。

― 世界ではE10・E20は使われているのでしょうか?
世界では既に多くの国々でE10やE20が使われています。
例えば、欧州ではEUとして導入規制はありません。しかし、バイオエタノール混合ガソリンは規格があり、各国が独自の規制、独自の目標を掲げて、導入の後押しをしています。

例えばイギリスではレギュラーガソリンのE10の義務化を行っています。ガソリン全体では既に8%の導入が進んでいます。
また、アメリカでは一律の混合規制は行っていませんが、バイオエタノールの導入目標を掲げています。そのため、2022年からはE15の販売が全土で始まっています。
ブラジルはE27の義務化を進め、2030年にはE30の実現を目指しています。既にE85と呼ばれる85%混合ガソリンも扱われています。さらには、E100と言われる100%アルコールガソリンも利用が進んでいます。このためガソリン全体では、利用率は45%と非常に高く、導入実績も十分あります。
これからは、タイやインドなどの新興国でもE10やE20の義務化が進んでいきます。
一方でバイオエタノールの供給はアメリカやブラジルなどでは、バイオエタノールを国内で生産、使用することが可能です。アメリカは110%、ブラジルは124%と自給率が高く、自給自足を超えた供給余剰の状態になっています。

― E10・E20を導入することでどの程度、脱炭素が期待できるのでしょうか?
経済産業省の公示によるとアメリカ産トウモロコシから製造されたバイオエタノールはガソリンに比べ、ライフサイクル(原材料の調達~生産~消費~リサイクル等の全工程)での地球温暖化効果ガスの削減が59%できます。
同じようにブラジル産サトウキビから製造されたバイオエタノールも68%削減が可能です。仮に自動車用にE20を導入した場合、全体の13%の脱炭素が期待できます。

具体的には2024年に国内で消費されたガソリンは4400万klあります。これをE20に置き換えると880万klのバイオエタノールが必要です。しかし、これによって1700万トンの脱炭素効果が期待できます。

― E10・E20に混合される、バイオエタノールの供給ポテンシャルについて教えてください。
バイオエタノールの供給はアメリカやブラジルなどの国になります。アメリカでは110%、ブラジルでは124%と自給率が高くなっています。一方でバイオエタノール生産は、アメリカが約50%、2位のブラジル約30%と、2つの国を合わせて80%を越えて、非常に地理的に偏っています。

エタノールの原料は、世界的に見るとサトウキビ61%、トウモロコシ31%と主要生産国の影響が大きくなっています。
今、日本ではバイオエタノールの自給率はゼロです。当面は海外から輸入することが必要です。そのために、輸出余力のあるアメリカやブラジル、アジア、このような国々から輸入をしていきます。
このため、今までの産油国との交渉とは異なって、新しい国々との外交が必要になってきます。バイオエタノールの導入拡大のためには、関係国と良好な関係を作りながら安定的なサプライチェーンを作る必要があります。
また、バイオエタノールは、ガソリンと同じような値動きをします。一方で、世界的にはバイオエタノールの需要が拡大していきますので、バイオエタノールの調達コストが高くなっていく可能性があります。
欧州では可食原料の制限が進んでいます。これからは木材、草、サトウキビの残さ、マメ科のポンガミアといった非可食資源の可能性も検討が必要です。加えて、特定国からのバイオエタノールの輸入ではなく、国内でバイオエタノールの生産の可能性を追求する必要もあります。

世界中でE10、E20ガソリンが使われていることがよくわかりました。
また、エネルギーセキュリティの面から見ても、バイオエタノールは貢献するという意外なメリットも解説いただきました。
次回はE10、E20の安全面など、私たちの生活に関わる質問を聞いていきます。後編もお楽しみに!


