経済産業省がバイオ燃料の普及に向けた新たなガソリン政策を発表
経済産業省は2024年11月、自動車ガソリンにバイオエタノールを混ぜることで環境負荷を軽減する新たな政策目標を発表しました。
バイオエタノールは、植物や作物を原料にした再生可能エネルギーとして注目されています。バイオエタノールは、トウモロコシやサトウキビなどの植物から作られ、二酸化炭素(CO₂)の排出削減に寄与することが期待されています。
今回発表された政策では、以下の3つの目標が掲げられています。
1. 2030年度までに、バイオエタノールの導入拡大を通じて、最大濃度10%の低炭素ガソリンの供給開始を目指す
E10ガソリンは、従来のガソリンに比べてCO₂の排出量が少なく、環境に優しい燃料です。2030年度までに国内での供給を開始する目標が立てられました。
2. 2030年代のできるだけ早期に、乗用車の新車販売におけるE20 対応車の比率を100%とすることを目指す
2030年代の早期には市場に出るすべての新車がE20ガソリン対応となることを目指します。この目標により、バイオ燃料利用が広く普及する基盤が整います。
3. 2040年度から、最大濃度20%の低炭素ガソリンの供給開始を追求する
2040年度にはE20ガソリンが給油所で購入可能となり、多くの車両がより環境に優しい燃料を使用できるようになることを目指します。
これらの目標を実現するため、経済産業省は給油所設備の改修費用などへの支援策を検討する方針であり、特にバイオエタノール対応設備の整備が課題とされています。そのため、2025年5月頃までに詳細な行動計画を策定し、具体的な支援策を講じる予定です。
今回の政策が進めば、私たちの日常生活にも良い影響が期待できます。石油精製所やガソリンスタンドなどのガソリン供給網での若干の改修や、自動車のエタノール混合ガソリンへの適合化を行うことによって、既存のガソリン利用インフラを利用して環境に配慮した選択が可能になります。
この取り組みが進むことで、車を利用する私たち一人ひとりが環境に貢献できる機会が広がります。
カーボンニュートラル実現のため、乗用車でのCO₂削減が不可欠に
2050年までに温室効果ガスの排出量を実質ゼロとする「カーボンニュートラル」の実現に向け、乗用車におけるCO₂削減は最も重要な課題の一つです。自動車を含む運輸部門は、国内全体のCO₂排出量の約19%を占めており、その中でも自家用自動車が約45%を占めることから、乗用車の脱炭素化が注目されています。
政府は2035年までに国内で販売される乗用車の新車をすべて電動車(ハイブリッド車(HV)、プラグインハイブリッド自動車(PHV)、電気自動車(EV)、燃料電池自動車(FCV)に切り替えることを目指しています。この目標の達成によって、化石燃料依存から脱却し、CO₂排出量の大幅な削減を期待しています。
しかし、現在のところEVの普及は思うように進んでいません。主な要因として、充電インフラの整備が遅れていることや、車両価格が高いことなどが挙げられます。そのため、既存のガソリン車やHV、PHVでも脱炭素化を進める必要性が高まっているのです。
そこで、脱炭素化の有力な解決策として注目されているのがバイオ燃料(バイオエタノール混合ガソリン)の活用です。バイオ燃料は、植物由来の再生可能エネルギーであり、化石燃料と比較してCO₂排出量を大幅に削減できる可能性があります。
2050年までにカーボンニュートラルを達成するためには、乗用車におけるCO₂削減が不可欠です。EVの普及が進む中でも、ガソリン車やHV、PHVを含めた多様な取り組みが必要です。政府や産業界だけでなく、私たち一人ひとりの選択と行動が、持続可能な未来を築く鍵となります。より良い環境のために、できることから始めていきましょう。
バイオ燃料と合成燃料を併用して液体燃料のカーボンニュートラル化実現へ
液体燃料のカーボンニュートラル化は、運輸部門における温室効果ガス削減の鍵を握る重要な取り組みです。特に、バイオ燃料と合成燃料(e-fuel)の併用は、その実現に向けた手段として注目されています。
合成燃料は、CO₂(二酸化炭素)とH₂(水素)を化学的に反応させて製造される燃料です。合成燃料は低炭素燃料として評価されています。
バイオエタノールをはじめとするバイオ燃料は、環境に優しい再生可能エネルギーとして、すでに実用化されています。一方、合成燃料は日本国内で2030年前半の商用化を目指して現在開発が進められています。まずガソリンにバイオエタノールを混合して脱炭素を進めるために、必要な法整備やインフラ整備を進め、合成燃料の開発後には、この2つを併用することが期待されています。
ガソリン需要は、EVの普及やエンジン技術の向上(=燃費の向上)により今後減少すると予測されています。しかし、内燃機関車両が完全に置き換わるには時間がかかるため、また災害や停電の際にも役立つため、液体燃料の脱炭素化は依然として非常に重要です。