バイオエタノール生産と食料供給の関係
バイオエタノールの生産は食料供給に悪影響を与えるのでしょうか?この問題について詳しく見ていきましょう。
脱炭素化を進める中で、バイオエタノールの原料として「トウモロコシ」「サトウキビ」「小麦」などの食料が使用されています。これにより、食料供給が困難になり、飢餓が発生するのではないかという懸念が出ています。
しかし、トウモロコシの世界生産量は大幅に増加しており、実際のデータを見てみると、この懸念は当たっていないことがわかります。
- 1960年代:約2億トン
- 2020年:約11億トン
しかも、バイオエタノールの原料になるトウモロコシはデントコーン(主に家畜飼料の原料に使われる)、人間が食べるトウモロコシはスイートコーンと呼ばれ、異なる品種です。
アメリカのデントコーン生産量は3億5,800万トンに対して、食料となるスイートコーンは300万トンで1%以下です。
さらに、世界のトウモロコシ生産量は、生産技術の向上により、バイオエタノールでの消費量をはるかに上回るペースで増加しています。そのため、食料としての利用が不足するような状況は現在起きていません。
つまり、バイオエタノール生産は食料供給を脅かすものではなく、むしろ農業生産性の向上と両立していると言えるでしょう。
トウモロコシ由来のバイオエタノール生産で家畜飼料を併産
2020年の世界のトウモロコシ生産量は約11億トンに達し、そのうち半分以上が家畜飼料として利用されています。そしてトウモロコシ生産量の世界トップはアメリカで、全世界の3分の1の生産量を占めています。これは、トウモロコシが家畜の重要な栄養源となっていることを示しています。
また、バイオエタノールの原料としての利用は12%です。供給量の増加と比較しても食料供給への影響は少ないことがわかります。
バイオエタノールの原料となるトウモロコシの粒(子実)の約3分の1は、エタノール生産に使用されないタンパク質や脂肪分、繊維やミネラルなどの栄養分で構成されています。これらの栄養分は無駄にされることなく、回収されてジスチラーズグレインと呼ばれる家畜飼料の重要な栄養分として有効利用されています。
家畜飼料としてのトウモロコシの利用量は、1975年の1億トンから2021年には7億トン以上へと、大幅に増加しました。特に2010年代以降、バイオエタノールの原料としてトウモロコシが使用されるようになったことで、併産物として生じる家畜飼料の供給も増加しました。
このように、バイオエタノールの生産・普及は、トウモロコシの多目的利用を促進し、食料や飼料も含めた全体的な供給量の増加につながっているのです。
40年間でトウモロコシの供給量は約2倍に増加
「世界人口が増えているのに、トウモロコシの生産量は足りているのかな?」
こんな疑問を持ったことはありませんか?実は、トウモロコシの生産は人口増加を上回るペースで成長しているんです。
具体的に見てみましょう:
- 1960年から2020年までの60年間で、1人あたりのトウモロコシ供給量は約2倍に増加しました。
- これは世界人口の増加率を上回っています。
- つまり、私たちには以前よりも多くのトウモロコシが行き渡っているのです。
このトウモロコシの生産量増加には大きな意味があります。食料としての需要を満たすだけでなく、バイオエタノールの原料としても活用できるようになりました。これは、食料安全保障と環境に配慮したエネルギー生産の両立を可能にする重要な進展なのです。