トウモロコシの単位面積あたりの収穫量は約3倍に
世界のトウモロコシ生産は、過去60年間で大幅に効率化しました。
具体的には、1961年から2021年までの間にトウモロコシの収穫面積は2倍に増加した一方、単位面積あたりの収穫量(単収)は3倍に増加しました。特にアメリカでは、単収が約3倍に増加した一方で、収穫面積はほとんど増加していません。この事実から、特に単位面積あたりの収穫量の増加が収穫量全体の増加に大きく寄与していることが分かります。
これは、農業技術の進歩に起因しており、品種改良、精密農業の導入、機械化の進展が大きく貢献しています。こうした技術革新により、少ない土地でより多くのトウモロコシを生産することが可能になりました。
トウモロコシにはさまざまな種類がありますが、バイオエタノールの主な原料として使用されるのは「デントコーン」と呼ばれる品種であり、このデントコーンの生産量が特に増加しています。デントコーンの生産量は、一般的に食用とされる甘いスイートコーンの生産量に比べ圧倒的に多いのです。デントコーンはでんぷんの含有量が高く、バイオエタノール生産に適しています。
バイオエタノールの生産量が増加しているにもかかわらず、トウモロコシの供給は需要に対応できています。これは前述の生産効率の向上によるものです。
アメリカを例にとると、具体的には以下が挙げられます:
- 収穫量の増加:1960年代から現在にかけて、単位面積あたりの収穫量は約3倍に増加しています。
- 栽培技術の向上:輪作や土壌管理の最適化により、持続可能な生産が実現しています。
- 水利用効率の向上:点滴灌漑システムの導入により、少ない水で収量を維持できています。
生産効率の向上により、トウモロコシの増産において大規模な森林伐採や新規農地の開拓はほぼ必要なく、土地利用による環境への悪影響はほとんど見られていません。
トウモロコシ生産を支える最新の農業技術
トウモロコシの生産量が大幅に増加した一方で、作付面積はそれほど拡大していません。これはどのように実現されたのでしょうか?その答えは、革新的な農業技術の進歩にあります。
以下に、主要な技術革新とその効果を詳しく説明します:
- 情報技術(IT)の活用
- ドローン:空から畑を監視し、病害虫の発生や水不足などの問題を早期に発見。例えば、赤外線カメラを搭載したドローンで作物のストレスを検出し、適切な対策を素早く講じることが可能になりました。
- GPS:精密農業を実現。トラクターなどの農機具にGPSを搭載することで、センチメートル単位での正確な耕作や施肥が可能になり、資源の無駄を大幅に削減しました。
- 種子の品種改良
- 耐病性の向上:病気に強い品種を開発することで、農薬の使用量を減らしつつ、収穫量を安定させました。
- 収穫量の増加:同じ面積でより多くの実をつける品種を開発。
- 遺伝子組み換え技術
- 害虫抵抗性:特定の害虫に対する抵抗性を持つ遺伝子を導入することで、農薬の使用を減らしつつ、収穫量を維持。
- 除草剤耐性:特定の除草剤に耐性を持つ品種を開発し、雑草管理を効率化。これにより、土壌の耕起を減らし、水分保持や土壌浸食の防止にも貢献しています。
- 精密農業の実践
- センサー技術:土壌水分、栄養状態、気温などを常時モニタリング。これにより、必要最小限の水や肥料を適切なタイミングで供給できるようになりました。
- ビッグデータ分析:過去の気象データや収穫データを分析し、最適な播種時期や収穫時期を予測。これにより、天候リスクを最小限に抑えつつ、収穫量を最大化しています。
これらの技術革新により、トウモロコシの単位面積あたりの収穫量が飛躍的に向上し、限られた農地でより多くの生産が可能になりました。結果として、新たな農地開拓の必要性が減少し、環境への負荷を抑えつつ、増大する需要に応えることができるようになったのです。
持続可能な原料生産のために必要な4つの要素
主にアメリカやヨーロッパなどの先進国で推進される農業技術の進歩は、今後は発展途上国にも広がっていくことが期待されます。その上で、今後もバイオエタノール原料生産が持続可能であるために、以下に留意する必要があります。
- より少ないインプットで多いアウトプットを
トウモロコシなどの作物を育てる際、肥料や農薬、水資源といったインプットを最小限に抑えながら、収穫量(アウトプット)を増やすことが重要です。精密農業技術やデータ分析を活用することで、必要な資源を正確に適用し、無駄を減らします。 - 土壌と水資源の保全
農業において、健全な土壌と水資源の保全は不可欠です。持続可能な農業技術では、作物の成長に必要な水を節約し、土壌浸食を防ぐため、適切な灌漑技術などの活用が奨励されています。 - 生態系の保全
化学農薬の使用は、環境への影響を最小限に抑えつつ、作物保護に必要な場合にのみ使用することが大切です。また、野生動物の生息地を保護し、生態系バランスを保つために農業地と自然環境の調和を目指す取り組みが求められます。 - エネルギー効率の改善
エネルギー効率を高めるためには、コンピューター制御による土壌や作物の状態をリアルタイムでモニタリングする技術が有効です。これにより、肥料や水の使用量を正確に調整し、エネルギーの無駄を減らすことが重要です。
これらの取り組みを進めることで、農業は持続可能で効率的なものとなり、環境への負荷を軽減しながらも生産性を向上させることが可能となっていくのです。