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食料とバイオエタノールの関係

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バイオエタノール生産と食料供給

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バイオエタノール生産と食料供給の関係

バイオエタノールの生産が増えていくと、以下のような疑問を持つ人がいるかもしれません。

「バイオエタノールの原料であるトウモロコシやサトウキビは食料としても重要な作物です。バイオエタノール生産が増加することで、食料供給に影響が出るのではないでしょうか?」

バイオエタノールの活用による脱炭素化を進める中で、食料供給が困難になるのではないかという懸念です。これは真実なのでしょうか。
実は、トウモロコシの世界における生産量は大幅に増加しており、実際のデータを見てみると、食料供給が困難になるという可能性は低いことがわかります。


食料供給が困難になる可能性は低いと言える理由①
大幅なトウモロコシ生産量の伸長

世界のトウモロコシ生産量は大きく伸びています。1960年代に約2億トンだった生産量は2020年には約11億トンと、およそ5倍にまで増加しました。

世界全体でのトウモロコシ生産量は2000年代以降順調に増大しています。

そのうち、エタノールの原料として利用されているトウモロコシの割合は約10%に過ぎません。

世界のトウモロコシ用途別利用量をみると、エタノール原料利用の割合は10%。食料用や飼料用としての市場の需要に対して、供給量は充分に満たせている状態が続いています。

アメリカのみで見てみると、アメリカのトウモロコシ生産の増加分はバイオエタノールの原料として利用されており、家畜飼料や、食品用としての用途を圧迫していないことがわかります。

1986年から2022年の米国産トウモロコシの利用先の推移を見ると、エタノールの生産量の増加に伴って家畜飼料や食品用の利用量を圧迫しているわけではないのがわかる。

トウモロコシ生産量が大きく伸びていて、食料利用分を圧迫していない、これが、バイオエタノール生産により食料供給が困難になる可能性は低いと言える理由その1です。


食料供給が困難になる可能性は低いと言える理由②
バイオエタノール生産で原料として使われるのはデントコーンである

普段、私たちが焼きトウモロコシや缶詰などで食べている甘いトウモロコシはスイートコーンと呼ばれる品種。実はバイオエタノール生産で使われるトウモロコシはデントコーンという全く異なる品種であり、生でかじっても甘くなく、硬いため生食用には向きません。

しかも、生産量として見るとアメリカのデントコーン生産量が約3億9,000万トン(2024)に対して、食料となるスイートコーンは約300万トンで1%以下です。

生産技術の向上により、トウモロコシ生産はバイオエタノールにおける需要を充分に満たしており、現在食料としての利用が不足するような状況は起きていません。

次のお話では、さらにバイオエタノール生産が畜産業に対して貢献している事例をお伝えします。


トウモロコシ由来のバイオエタノール生産で家畜飼料を併産

2020年の世界のトウモロコシ生産量は約11億トンに達し、そのうち半分以上が家畜飼料として利用されています。これは、トウモロコシが家畜の重要な栄養源となっていることを示しています。また、トウモロコシ生産量の世界トップはアメリカで、全世界の3分の1の生産量を占めています。

バイオエタノールの原料となるトウモロコシの粒(子実)の約3分の1は、エタノール生産に使用されないタンパク質や脂肪分、繊維やミネラルなどの栄養分で構成されています。これらの栄養分は無駄にされることなく、回収されてジスチラーズグレイン(DDGS)と呼ばれる家畜飼料の重要な栄養分として有効利用されています。

バイオエタノール生産に使われた残りから、非常にバランスの良い飼料(DDGS)が生まれます。

DDGSはバイオエタノール生産から生まれる価値の高い産物として「副産物」ではなく「併産物」と呼ばれています。畜産経営において、飼料代はコストの大部分を占めます。家畜飼料としてのトウモロコシの利用量は、1975年の1億トンから2021年には7億トン以上へと、大幅に増加しました。特に2010年代以降、バイオエタノールの原料としてトウモロコシが使用されるようになったことで、併産物として生じる家畜飼料の供給も増加しています。このDDGSがあることで、私たちは安定した価格と品質の畜産物を手に入れることができるのです。

バイオエタノール生産の過程で生まれる併産物「DDGS(ジスチラーズグレイン)」は、化学と工夫によって生み出された「付加価値製品」です。

60年間でトウモロコシの一人当たりの供給量は約2倍に増加

「トウモロコシの生産量が増え、バイオエタノールで必要な生産量を賄えているのはわかりました。でも、世界人口が増えている分はカバーできているのでしょうか?人口の増加分、食用作物の生産にまわした方がいいのでは?」

このように思われる方もいるかもしれません。実は、トウモロコシ生産は人口増加を上回るペースで成長しています。

1960年から2020年までの60年間で、1人あたりのトウモロコシ供給量は約2倍に増加しました。これは世界人口の増加率を上回っています。つまり、私たちには以前よりも多くのトウモロコシが行き渡っているのです。

トウモロコシ生産量が増加することで、食料としての需要を満たすのみでなく、バイオエタノールの原料としての役割や、ジスチラーズグレイン(DDGS)の併産といった新しい価値を生み出すことができるようになりました。

現在、バイオエタノール生産が増えることで食料が不足するといった事象は起きていません。しかし、将来にわたって食料や環境とのバランスを注視し続けることは大切です。

持続可能な未来のために、さらなるトウモロコシの活躍に期待しましょう。

バイオエタノールの原料となっているデントコーンについて、もっと知りたくなった方は、「もっと知りたい!デントコーン」のテーマもぜひ覗いてみてください。