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自動車とバイオエタノール

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世界で普及するE10

E10燃料の導入推進で環境と経済の両立を目指す

政府が2030年度までの供給を目標に掲げたE10燃料。この取り組みは、環境負荷の軽減と経済対策を両立させる新たなエネルギー政策として注目されています。

そもそもE10とは何でしょうか。E10とは、ガソリンに10%のバイオエタノールを混合した燃料を指します。バイオエタノールは、トウモロコシやサトウキビといった植物を原料に製造される再生可能エネルギーで、従来のガソリンエンジンでも使用可能です。

E10とは、ガソリンに
10%のバイオエタノールを混合した燃料。バイオエタノールは、トウモロコシなどの植物を原料に製造される再生可能エネルギー。
  • 環境への配慮:
    化石燃料であるガソリン燃焼によるCO₂排出量を削減し、気候変動の進行を抑えることを主な目的としています。
  • 乗用車燃料価格の安定:
    バイオエタノールの混合により、化石燃料への依存度を低減し、燃料価格の安定化を図ることも重要な狙いです。特に近年のガソリン価格の高騰が家計や産業に与える影響を軽減する効果も期待できます。
E10を導入する2つの目的。環境への配慮。乗用車燃料価格の安定。

以下の記事で解説をしている通り、E10はすでに多くの国で標準的な燃料として採用されています。

記事:ガソリンに混ぜて使われるバイオエタノール

E10燃料の導入は、環境と経済の両面で持続可能な社会の実現に貢献する重要な施策です。すでに多くの国々で標準燃料として採用されているE10は、日本においても脱炭素化とエネルギー安定化を両立させるための重要な取り組みとなります。2030年度までの導入目標を達成するためには、国民一人ひとりがその意義を理解し、協力することが大切です。


世界が進めるバイオ燃料導入の理由

世界では、E10などのバイオ燃料(バイオエタノール混合ガソリン)の導入が積極的に進められています。その背景には、環境や経済、人間の健康に与える影響が存在します。

世界では既にE10などのバイオ燃料の導入が進んでいる。

世界が進めるバイオ燃料導入の理由を見ていきましょう。

1. CO₂削減に即効性がある

バイオエタノールをガソリンに混合するだけで、CO₂削減の効果が得られることが最大の理由の一つです。燃料を完全に置き換える必要がなく、従来のガソリンと同様に使用できるため、スムーズな導入が可能です。また、既存の車両やインフラを活用できるため、脱炭素化を即座に進める効果的な手段となっています。

2. 従来のガソリンスタンドが利用可能

バイオ燃料は、既存のガソリンスタンドで取り扱えるため、充電器や水素ステーションのような新規設備の大規模な導入が必要ありません。バイオ燃料を取り扱うためにガソリンスタンドのタンクの改修などを行う場合はあるものの、電気自動車(EV)や燃料電池車(FCV)と比較するとコストは安価に抑えられます。この特徴により、バイオ燃料はインフラ整備の負担が少ない燃料として評価されています。

3. 導入コストが安価

バイオ燃料の導入は、他の代替エネルギー源に比べてコスト面で優れています。

  • 車両コスト:
    電気自動車(EV)や燃料電池車(FCV)は車両価格が高額であり、導入に高い初期費用がかかります。
  • インフラ整備コスト:
    EVやFCVは、新たな充電器や水素ステーションの設置が必要ですが、バイオ燃料は既存のインフラを利用できるため、コストを大幅に削減できます。
世界が進めるバイオ燃料導入の理由。1、CO2削減に即効性がある。2、従来のガソリンスタンドが利用可能。3、導入コストが安価。

このような特長から、バイオ燃料(バイオエタノール)は持続可能なエネルギー社会を実現する重要な選択肢となっています。


アメリカが進めるバイオ燃料の普及

アメリカは、バイオエタノールの生産量で世界トップを誇る国です。自国で生産されるトウモロコシを活用したバイオ燃料の普及に積極的に取り組んでおり、その成果は環境や経済、エネルギー安全保障においてプラスの影響を与えています。

アメリカは、バイオエタノールの生産量で世界トップを誇る国。自国で生産されるトウモロコシを活用したバイオ燃料の普及に積極的に取り組んでいる。

アメリカでは、トウモロコシ1トンから以下製品が生産されています:

  • エタノール: 約330キログラム
  • CO₂: 約320キログラム
  • 家畜飼料(ジスチラーズグレインとコーンオイル): 約290キログラム

これにより、トウモロコシ1トンから「バイオエタノール、CO₂、家畜飼料」がおおよそ1:1:1の割合で効率的に生産されています。特に、ここで生産されるCO₂は純度が99%と非常に高く、かつ植物(トウモロコシ)が大気中から吸収したものです。このCO₂は現在炭酸飲料やドライアイスの原料として活用されており、今後は合成燃料の原料としても注目されています。

アメリカ産トウモロコシからエタノールを作ると、CO2と家畜飼料も併産される。エタノール
、CO2、家畜飼料。CO2は炭酸飲料やドライアイスの原料として活用されている。

アメリカでは、ほぼすべてのガソリン車がE10(10%のバイオエタノールを混合したガソリン)で走行しています。一部の地域では、より高濃度のエタノール混合燃料であるE15やE85も販売されており、バイオ燃料の選択肢が広がっています。

  • E85対応車(フレックス燃料車): アメリカ国内では、1998年の販売開始から2024年までに総計2,200万台以上のフレックス車が登録されており、これは総走行ガソリン車数の約8%に相当します。

これにより、バイオエタノール燃料は日常的に多くの車両で利用されており、化石燃料依存を減らす取り組みが進んでいます。

アメリカでは、ほぼすべてのガソリン車がE10で走行している。E85対応車(フレックス燃料車)の利用も進んでいる。

アメリカは豊富なトウモロコシ資源を活用し、バイオエタノールを中心としたバイオ燃料の普及において世界をリードしています。トウモロコシからバイオエタノールだけでなく、CO₂や家畜飼料を効率的に生産することで、経済と環境の両立を実現しているのです。また、E10をはじめとするバイオ燃料の利用拡大や、フレックス車の普及など、官民一体となった取り組みは、他国のモデルケースともいえるでしょう。