\まずは30秒で内容をチェック!/
E10の導入推進で環境とエネルギー安全保障の強化を目指す
日本政府が2030年度までの本格供給を目指し、現在導入に向けた準備を進めている「E10」。この取り組みは、環境負荷の軽減と日本のエネルギー安全保障の強化にも繋がる、新たなエネルギー政策として注目を集めています。
そもそもE10とは、従来のガソリンにバイオエタノールを最大10%混合した燃料のことです。原料となるバイオエタノールは、トウモロコシやサトウキビなどの植物から作られる再生可能エネルギーであり、原料の植物が成長過程で大気中のCO₂を吸収するため、実質的なCO₂排出量を抑えられるのが大きな特徴です。
対応している車種であれば、これまでのガソリンエンジン車でもそのまま使用することができます。

E10を導入する2つの大きな目的は以下の通りです。
- 環境への配慮
化石燃料であるガソリンの使用量を抑え、CO₂排出量を実質的に削減することで気候変動の進行を抑えることを主な目的としています。
- エネルギー安全保障の強化
日本は現在、原油の9割以上を中東からの輸入に依存しています 。バイオエタノールはアメリカやブラジルなど中東以外の国から調達できるため、ガソリンに混合することで中東への過度な依存を低減し、エネルギー供給源を多角化することも重要な狙いです 。

世界が進めるバイオ燃料導入の理由
以下の記事で解説をしている通り、E10はすでに多くの国で標準的な燃料として採用されています。
その背景には、環境や経済に与える影響が存在します。世界が進めるバイオ燃料導入の主な理由を見ていきましょう。

1. CO₂削減に即効性がある
バイオエタノールをガソリンに混合するだけで、CO₂削減の効果が得られることが最大の理由の一つです。社会にあるすべての車を新しいエコカーに置き換えるのを待つ必要がなく、現在走っている対応ガソリン車をそのまま使いながら脱炭素化をスタートできるため、極めて即効性の高い手段となっています。
2. 従来のガソリンスタンドが利用可能
バイオ燃料は、現在私たちが利用しているガソリンスタンドで供給することができます。タンクの腐食対策や水分混入を防ぐための設備改修などは必要になるものの、EV用の充電器や水素ステーションを全国規模でゼロから新設するのに比べると、インフラ整備にかかる時間やコストを大幅に抑えることができます。
3. 導入コストが安価
新しいエネルギー源への移行において、消費者への経済的負担が少ない点も重要です。EVや燃料電池車(FCV)は車両本体価格が比較的高額であり、乗り換えには大きな初期費用がかかります。しかし、バイオエタノール混合ガソリン(E10)であれば、すでに普及している多くのガソリン車がそのまま対応しているため、消費者が無理に高額な新車を購入しなくても環境対策に貢献できるという強みがあります。

このような特徴から、E10などのバイオ燃料(バイオエタノール)は、持続可能なエネルギー社会へと無理なく移行するための重要な選択肢として位置づけられています。
アメリカが進めるバイオ燃料の普及
世界第1位のバイオエタノール生産量を誇るアメリカ。自国の広大な農地で育つトウモロコシを最大限に活用し、環境負荷の低減、経済効果の創出、そしてエネルギー安全保障の強化を同時に進めるエネルギー政策を展開しています。

アメリカにおけるトウモロコシを用いたバイオエタノール製造の最大の特徴は、その無駄のなさにあります。トウモロコシ1トンからは、以下の製品が効率的に生産されます。
- エタノール: 約330キログラム
- CO₂: 約320キログラム
- 家畜飼料(ジスチラーズグレインとコーンオイル): 約290キログラム
このように「燃料・CO₂・家畜飼料」がおおよそ1:1:1の割合で生み出されます。特に、ここで生産されるCO₂は純度が99%と非常に高く、かつ植物(トウモロコシ)が大気中から吸収したものです。このCO₂は現在炭酸飲料やドライアイスの原料として活用されており、今後は次世代の「合成燃料(e-fuel)」を製造するためのCO₂リソースとしても期待が寄せられています。

また、アメリカにおけるバイオ燃料の普及は、社会インフラとしてすでに深く根付いており、混合濃度に応じた多様な選択肢が提供されています。
- E10(エタノール10%混合)は日常的に利用
現在、アメリカのガソリンスタンドで販売されている燃料の大部分が「E10」であり、国内を走るほぼすべてのガソリン車がこのE10を日常的に使用しています。 - E15(エタノール15%混合)の普及拡大
さらなる脱炭素化を目指し、近年はE10よりも環境負荷の低い「E15」の販売地域も拡大しています。アメリカ環境保護庁(EPA)の基準では、2001年以降に製造された乗用車であればE15を使用可能とされており、多くの消費者にとって身近な選択肢となっています。 - E85とフレックス車(FFV)の活躍
一部の地域では、バイオエタノールを最大85%混合できる「E85」も販売されています。これに対応する「フレックス燃料車(FFV)」は、2022年までに全米で累計2,200万台以上が登録され、国内を走るガソリン車全体の約8%に相当する規模にまで成長しました。
これにより、バイオエタノール燃料は日常的に多くの車両で利用されており、化石燃料依存を減らす取り組みが進んでいます。

アメリカは豊富なトウモロコシ資源を背景に、バイオエタノールを中心とした再生可能エネルギーへの移行において世界をリードしています。一つの原料から燃料・CO₂・飼料を効率的に生み出す循環型システムと、E10をベースにE15やE85へと段階的に利用の幅を広げるインフラ構築は、バイオ燃料の導入拡大を目指す他国にとって、参考となるでしょう。


