「エタノール・プロデューサー・マガジン2022年1月号」より『バイオ燃料もEUのカーボンニュートラル達成に貢献させるべき』

「エタノール・プロデューサー・マガジン」に掲載された『バイオ燃料もEUのカーボンニュートラル達成に貢献させるべき』の原文の英語版と参考和訳を掲載いたします。

(参考和訳)

 

バイオ燃料もEUのカーボンニュートラル達成に貢献させるべき


再生可能エタノールは、排出量を削減するための、最も即効性があり費用対効果が高く、社会的に完成している持続可能な方法である。欧州は、Fit for 55 [1]の具体的施策に重要なツールとしてエタノールを組み込むことによって、その政策をより良くすることができるであろう。

エマニュエル・デスプレチン, ePURE (欧州再生可能エタノール協会)事務局長|2021年12月26日

欧州連合(EU)は、2030年までに野心的な排出削減目標を達成し、今世紀半ばにカーボンニュートラルを達成できるよう、エネルギー・気候関連法を強化する取り組みを開始した。しかし、このいわゆるFit for 55パッケージの広範な提案は、脱炭素化の解決策としてすでに実績ある欧州産エタノールなどの再生可能液体燃料に、必ずしも十分な役割を与えてはいない。

カーボンニュートラルを目指す上で、バイオ燃料を最大限に利用することは、まさに常識である。電気自動車の市場シェアが急速に拡大し、内燃機関自動車の販売が段階的に廃止されるシナリオにおいて、2030年やそれ以降になっても、EUの自動車の大部分は、液体燃料に少なくとも一部は依存して走る自動車で占められることになる。

このようなガソリン車やハイブリッド車に対して、EUには 域内産の解決策が用意されている。それこそが、再生可能なエタノールであり、排出量を減らすための最も即効性があり費用対効果が高く、社会的に完成している持続可能な手段なのである。欧州は、Fit for 55の達成のために、この重要なツールを無視するわけにはいかない。Fit for 55の提案には、EUの再生可能エネルギー指令(RED) [2] の再改訂から、自動車のCO2基準、エネルギー課税指令に至るまで、あらゆるものが含まれている。ここでは、政策立案者がFit for 55を目的に適ったものにするために、これらの重要な法案をどのように改善すべきかを概観する。

REDの改善
運輸における再生可能エネルギーの現行目標は、欧州グリーン・ディールや2030年気候法で定められたEUの脱炭素化目標を達成するには不十分であった。EUの化石燃料への継続的な依存を隠すだけの乗数を使用しない点で、新しいREDの提案は改善されている。しかし、もっとできることがあるはずだ。REDの潜在能力を完全に引き出すために、EUは以下を行うべきである。運輸部門における再生可能エネルギーについて、より高い温室効果ガス(GHG)削減目標の設定、持続可能な作物由来のバイオ燃料の促進と加盟国への管理の委譲、先進バイオ燃料の展開の継続と既存の遵守規則の施行、E10を標準とするエタノール混合の展開による、より高いブレンドへのインセンティブの提供。

事実に即した「ゼロエミッション」車
2035年までにCO2排出量を100%削減するという欧州委員会の決定は、事実上、内燃機関を搭載した新車の販売を禁止するものである。しかし、この提案は非現実的な自動車排出量の計算に基づいている。排気ガスの排出量だけに焦点を当てることで、バッテリー電気自動車や燃料電池車を「ゼロエミッション」と誤解させている。これは動力系の技術間の競争を歪め、技術中立の原則に反し、再生可能燃料の排出量削減への寄与を無視するものである。

逆に、EUはWell-to-Wheel[3] のCO2排出量に基づいて、より良い燃料にインセンティブを与え、欧州産エタノールのような既存の持続可能な再生可能燃料をより有効に活用するべきである。

GHGベースの税制
再生可能エタノールは、ガソリンと比較してエネルギー含有量が少ないため、現在のEUの「量」に基づく税制の中で最も重く課税される燃料となっている。この課税からの脱却を目指す欧州委員会の提案は、持続可能なバイオ燃料の化石燃料との競争力を高めることになる。ところが、「持続可能な食料・飼料作物用バイオ燃料」を「持続可能なバイオ燃料」のカテゴリーから除外し、その最低課税水準を化石燃料と同じになるように最終的に引き上げるという、欧州委員会による新しいエネルギー課税指令案は、RED IIの精神と矛盾している。より公平で持続可能なエネルギー課税指令のためには、EUはGHGの削減量に基づいて化石燃料よりも再生可能燃料を、一貫性を持って促進すべきである。

そのような最良の手段の1つとして、欧州産エタノールは、EUの計画において、単なる「移行燃料」や「その場しのぎの解決策」以上のものと見なされなければならない。それは、すでに脱炭素化のために結果を出している実証済みのソリューションであるが、適切な政策選択によって、将来さらに多くの貢献ができるようになるであろう。

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[1] 欧州委員会は2021年7月14日に発表した政策パッケージ。2030年の温室効果ガス削減目標を1990年比で少なくとも55%削減を達成するとした。

[2] 欧州議会が気候・エネルギー政策パッケージの一部として2008 年 12 月 17 日に採択した基準。2018年に改正された再生可能エネルギー指令(以下、REDⅡ)で、すべてのバイオエネルギーの持続可能性基準への適合が義務化され、2021年7月から完全施行。早くも次の改定案(以下、REDⅢ)が示されている。

[3] 自動車でのCO2排出量を計算する際に、単に排気ガスすなわちタンク(ガソリンタンク)からホイール(車輪)までのTank-to-Wheelではなく、ウェル(油井・油田)で石油が採掘されてから、精製・運搬を経てホイールの運動となるまでがどの程度排出されたかを表したもの。


 

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以下から英語版と参考和訳をPDFデータにてダウンロードできます。

How-Biofuels-Can-Supercharge-the-EUs-Drive-to-Carbon-Neutrality.pdf

(英語版)

バイオ燃料もEUのカーボンニュートラル達成に貢献させるべき.pdf
(参考和訳)

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