初めてコーンブレッドを焼いてみるという方に、
いくつかのレシピをご紹介します。
日本ではあまりなじみがないかもしれませんが、たとえば「パレスホテル箱根」では名物ですし、最近はオリジナルのコーンブレッドを焼くホテル、レストラン、パン屋さん、ケーキ屋さんが増えてきています。材料や焼き方で、お店の特徴を発揮しやすいため、熱心に研究する方が増えているようです。
コーングリッツは、日本ではトウモロコシを挽いた粉を総称する言葉でもあります。しかし、比較的粗挽きの粉をコーングリッツ、それよりも細挽きのものをコーンミール、さらに粒子の細かいものをコーンフラワーと呼ぶことが多いようです。
粒の大きさは好みもありますが、初めてコーンブレッドを焼く方は、「コーンミール」とか「細挽コーングリッツ」とラベルに書かれた粒子の細かい粉が良いでしょう。その方が、ふっくら、しっとりした仕上がりになるからです。
甘いお菓子用には「コーンフラワー」と書かれた小麦粉のように細かい粉もよいかもしれません。
少し粉の存在感が欲しい、ワイルドな舌触りが欲しい方は「中挽コーングリッツ」に挑戦してみるのも良いでしょう。いろいろ試してみて、ご自分のコーンブレッドを見つけてみてください。
より手軽にコーンブレッドを作ってみたい方は、輸入食材を扱っているお店で、コーンブレッド用のミックス粉を探してみてください。アメリカではたくさんの会社がいろいろなミックス粉を作り、スーパーマーケットなどで何種類ものミックス粉を見つけることができます。
ヨーロッパ人がアメリカ大陸に小麦とオレンジをもたらし、一方新大陸からトウモロコシなどの新しい作物を得た出来事を、アメリカでは「偉大な交換」(The Great Exchange)と呼びます。これによって、人類の食生活が大幅に進歩、多様化したからです。
とは言え、それからまだ間もないころ、ピルグリム・ファーザーズがアメリカ大陸に移住した当初は、新大陸での小麦生産はまだ十分安定したものではありませんでした。彼らが十分な収穫が得られずに苦労していたとき、アメリカ先住民族(インディアン)がトウモロコシを分け与えるなど、救いの手をさしのべました。感謝祭はそれを記念したものだと言われています。新大陸で手に入りやすいトウモロコシの粉と、小麦粉を混ぜて焼くコーンブレッドは、その時代に普及していったと考えるのが自然でしょう。
よく親しまれているものでは、「トム・ソーヤーの冒険」「ハックルベリー・フィンの冒険」など、マーク・トウェインの作品が挙げられます。作家として成功したマーク・トウェインは、世界中のいろいろな食べ物を味わいましたが、コーンブレッドをいつまでも愛し続けました。
日本でもファンの多い、ローラ・インガルス・ワイルダーの「大草原の小さな家」にも、コーンブレッドはよく登場します。インガルス家のアメリカ中西部での暮らしも、コーンブレッド抜きには語れません。
もちろん、現代の小説や映画にも、コーンブレッドは登場します。たとえば、スティーブン・キングの「グリーンマイル」。書籍も、トム・ハンクスが主演した映画も大成功を収めましたが、この作品の中の重要なシーンにも、コーンブレッドが登場します。
多くのアメリカの料理書にコーンブレッドのレシピが載っています。
しかし、コーンブレッドのバリエーションの多さと、食べ方についての詳しさでは、若い作家Jeremy Jacksonの『The Cornbread Book ―a love story with recipes―』の右に出るものはないかもしれません。
日本では、『コーンブレッドの本――レシピに恋したラブストーリー』(ジェレミー・ジャクソン著、坂下洋子訳、旭屋出版)として翻訳が出版されています。